理事長のコトノハ ■ Vol.16

ここだけの話10月

今、横浜から徳之島へ向っている。
ここだけの話。
さっき、預けたキャリーケースに、明治チョコレートをタンマリ入れ込んだ。
明治チョコレートは、ぼくの演出するときの必需品。
北京、上海では女優さんに。横浜ではスタッフさんへ。そして、徳之島では子役さんへ。
御機嫌うかがいに配布する。
しかし、徳之島では、明治チョコレートを手に入れるのが上海より手間がかかる。
売ってあるお店が、ホテルから遠いのだ。
だから、横浜のスーパーでタンマリ買い込んだ。
一体、どこの国のチョコレートなんだろう。

上海人口2400万。横浜人口360万。そして徳之島2万4千。
福岡から飛行機で、上海まで100分。飛行機とバスで横浜まで120分。
徳之島まで、飛行機で140分。
先日の台風に、徳之島のサトウキビはやられてしまった。被害総額3億円。
しかし、国会は団扇を持った女性議員と大臣が、何かを言い合っている、
一体、国ってなんだ❓

今回の横浜は、お年を召した中国からの帰国者が客席の75%を占めていた。
もちろん、彼らは日本人。でも、当然、中国語を話す。
そんな中、劇団道化は吉林食堂を上演し、その後、大谷昭宏さん(テレビのコメンティターでお馴染みのジャーナリスト)と、パネルディスカッションを行った。
なので、同時通訳を聴くためのレシーバーが足らずに、開演が15分遅れるハプニングも起きた。
しかし、辛抱強く、客席の25%を占める日本語しか喋らない日本人が付き合ってくれた。
フィナーレ。中国帰国者の46名の合唱団がステージへ。
“北国の春”を歌った。
MCのぼくは、歌詞コールを頼まれた。
歌の最後。“あの故郷(ふるさと)へ帰ろうかな♪かーえろうかな♪”
お世辞にもうまいとは言えない日本語で、精一杯の笑顔で歌う彼らを見ていたら…。
何かがこみ上げてきて、歌詞コールをぼくは、できなくなりそうになった。
でも、なんとか振り絞って…。
“あの故郷(ふるさと)へ帰ろうかな。帰ろうかな”と。コールした。

終演後、楽屋で、みんなから“最後、泣いてた?”と、訊かれた。
“今日初めて、彼等が北国の春を口ずさむのか、わかったような気がする”と、
ぼくは言った。
そして、長年の謎が解けた。
中国帰国者が帰りたかったのは、国ではなく、くに(故郷)だったのだ。

篠崎省吾

徳之島のサトウキビ畑徳之島のサトウキビ畑
大谷昭宏さん(右)と大谷昭宏さん(右)と
写真:“神奈川新聞”より転載写真:“神奈川新聞”より転載